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嘆息を洩らして

 裕佐は思はずかう嘆息を洩らして破《や》れ芭蕉の乱れてゐる三坪ばかりの庭の方を向いた。「いろんなものに引かれるのは結構ぢやないか。つまりそれ丈け、おぬしは眼があるのだからな。」 さう出られれば「勿論」と裕佐は云ひ度くなるのだつた。しかし自分の裡《うち》にはたしかに孫四郎なぞの窺ひも得ぬ何かがある...

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その笑ひ声の下品さ

 むしろ好んで皮肉を衒《てら》ふやうなその歪んだ口許《くちもと》に深い皺を寄せ乍らにや/\と傲《ほこ》りがに裕佐の顔を見てゐた孫四郎はかう云つて高く笑ひ出した。「傑作ですね。版にしたら又一しほ面白いでせう。」 その笑ひ声の下品さに嫌気を感じ乍らも裕佐はかうほめざるを得なかつた。「あの虎は君が画く...

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山田長政が象に乗つて

 孫四郎は邪慳にかう云ひ捨てて敷けば却つて冷た相な板のやうに重い座蒲団をドサリとわきへ放りなげ、長煙管《ながぎせる》の雁首《がんくび》で、鉄に銀の象嵌《ざうがん》をした朝鮮の煙草箱を引き寄せ乍らその長い膝をグツと突き出して坐つた。「それやこんなものよりやずつと傑作ぢや。此間の縁日の虎を早速やつて見...

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