窓の鉄棒

 窓の鉄棒を袖口を添えて両手に握り、夢現《ゆめうつつ》の界《さかい》に汽車を見送ッていた吉里は、すでに煙が見えなくなッても、なお瞬きもせずに見送ッていた。「ああ、もう行ッてしまッた」と、呟《つぶ》やくように言ッた吉里の声は顫えた。 まだ温気《あたたかみ》を含まぬ朝風は頬に※[#「石+乏」、第3水...

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妙な心持はする

 善吉は一層気が忙《せわ》しくなッて、寝たくはあり、妙な心持はする、機会を失なッて、まじまじと吉里の寝姿を眺《なが》めていた。 朝の寒さはひとしおである。西向きの吉里が室の寒さは耐えられぬほどである。吉里は二ツ三ツ続けて嚏《くさめ》をした。「風を引くよ」と、善吉はわれを覚えず吉里の枕もとに近づき...

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盆を片手に持ッて廊下へ出た

 お熊は敷布団の下にあッた紙入れと煙草入れとを取り上げ、盆を片手に持ッて廊下へ出た。善吉はすでに廊下に見えず、かなたの吉里の室の障子が明け放してあった。「早くお臥《やす》みなさいまし。お寒うございますよ」と、吉里の室に入ッて来たお熊は、次の間に立ッたまま上の間へ進みにくそうに見えた善吉へ言った。...

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