返辞もし得ないで

 善吉は吉里からこの語《ことば》を聞こうとは思いがけぬので、返辞もし得ないで、ただ見つめているのみである。「それでね、善さん、お前さんどうなさるんですよ」と、吉里は気遣わしげに問《たず》ねた。「どうッて。私しゃどうともまだ決心《きめ》ていないんです。横浜の親類へ行ッて世話になッて、どんなに身を落...

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眼には涙を一杯もッて

 善吉の様子に戯言らしいところはなく、眼には涙を一杯もッて、膝をつかんだ拳《こぶし》は顫えている。「善さん、本統なんですか」「私が意気地なしだから……」と、善吉はその上を言い得ないで、頬が顫えて、上唇もなお顫えていた。 冷遇《ふり》ながら産を破らせ家をも失わしめたかと思うと、吉里は空恐ろしくな...

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何を言ッてるんだね

「え、何を言ッてるんだね。吉里さん、お前さん本気で……。ははははは。串戯《じょうだん》を言ッて、私をからか[#「からか」に傍点]ッたッて……」「ほほほほ」と、吉里も淋《さみ》しく笑い、「今日ッきりだなんぞッて、そんなことをお言いなさらないで、これまで通り来ておくんなさいよ」 善吉は深く息を吐《つ...

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