実に此男の下等な偽悪趣味であつた

 裕佐が此版画家に対して何よりも嫌に思ひ、それがために友に飢ゑてゐ乍らもさう繁々と訪ねて深くつき合ふ気にどうもなれなかつたのは実に此男の下等な偽悪趣味であつた。 人の心持ちを何でも下等に浅薄に解釈して独り見抜いたやうな得意の薄笑ひを浮べ、人がそれに不快を感じて何かヘコマすやうな事を云ふと誰も呶鳴《...

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嘆息を洩らして

 裕佐は思はずかう嘆息を洩らして破《や》れ芭蕉の乱れてゐる三坪ばかりの庭の方を向いた。「いろんなものに引かれるのは結構ぢやないか。つまりそれ丈け、おぬしは眼があるのだからな。」 さう出られれば「勿論」と裕佐は云ひ度くなるのだつた。しかし自分の裡《うち》にはたしかに孫四郎なぞの窺ひも得ぬ何かがある...

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その笑ひ声の下品さ

 むしろ好んで皮肉を衒《てら》ふやうなその歪んだ口許《くちもと》に深い皺を寄せ乍らにや/\と傲《ほこ》りがに裕佐の顔を見てゐた孫四郎はかう云つて高く笑ひ出した。「傑作ですね。版にしたら又一しほ面白いでせう。」 その笑ひ声の下品さに嫌気を感じ乍らも裕佐はかうほめざるを得なかつた。「あの虎は君が画く...

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